映像字幕をつくるときに

バリアフリー字幕制作のヒント

字幕をつくる際の基準はあるの?

真剣に書き起こし中のおこ助

「翻訳字幕」「聴覚障害者用字幕」の制作に関する公的な基準(仕様書)のようなものは、実のところ、どこにも存在しません。

各映画会社やソフトウエア会社、テレビ放送のクローズドキャプションなどは、会社ごとや制作担当ごとで独自に作成した基準と判断で運用されているというのが現状です。

この記事では、映像内容に負担をかけず、できるだけ見やすい字幕とするために必要なことを中心にしてまとめています。

また、字幕は映像上の表現や言葉の伝達を手助けするというコミュニケーション手段の延長上にあるものです。技術規準書や工業規格書と同じように捉えて、本内容によって良い字幕の正確な再現を期待しても決してうまくはいきません。目的や本来必要なものが何なのかを制作者が理解しているからこそ、見る人に役立つ字幕が生まれるのです。

目的や意図を持たない、あるいは技術面だけに縛られたルールや仕様決めは、多くの場合、本当に字幕でのサポートを必要とする方々にとって不利益になることが多いことも、ご理解いただければ幸いです。

作成の骨組み
漢字かな表記
バリアフリー字幕の基本
バリアフリー字幕の音や音楽情報
その他
作成の骨組み

基本事項

一般的に、ビデオは30フレーム/1秒 映画は24コマ/1秒 で構成されています。(1フレーム=約0.03秒 1コマ=約0.04秒となります)

項目翻訳字幕バリアフリー日本語字幕テレビ放送用CC
局により大きく異なるため平均として
1行の物理的最大文字数10~14文字平均12~17文字平均15.5文字
または21文字
1秒あたりの目安文字数3~4文字が基本5〜7文字程度を目安に特になし
1字幕の行数2行まで話者名のみの1行を含み3行まで3行程度まで
表示内容の考え方要約ほぼ全内容(読み切れない場合に部分省略)ほぼ全内容(読み切れない場合に部分省略)
表示レイアウト横下中央合わせ・行頭合わせ/縦右横下中頭合わせが基本 (各行頭合わせで全体をセンターに置く)横下中頭合わせが基本 (行頭階段ずらしする局、話者の位置に合わせて配置する局あり)
表示時間の最低調整単位1フレーム(コマ)1フレーム(コマ)〜5フレーム1フレーム〜1秒
イン点の取り方声やセリフ始まりの寸前声やセリフ始まりの寸前声やセリフ始まりに近い場所
アウト点の取り方声の終わりのわずかにあと読み切れることを考慮し、声や音の終わりより長めに(字幕内容や映像内容によって調整)次の字幕が始まるところ
最短の字幕表示時間0.5秒程度0.5秒程度1秒〜2秒
最長の字幕表示時間6〜7秒程度セリフ関連は7秒程度10秒〜30秒
字幕と字幕の間隔0.1秒(2〜3フレーム)0.1秒(2〜3フレーム)なし〜1秒

文字の使用について

  • 文字カウントの基本を1文字=全角1文字 0.5文字=半角とします。
  • かな、カナ:全角表記(半角カタカナはやむを得ない場合に使用する場合があります)
  • 英字、英語、英単語:半角表記が一般的です(縦書きの場合は必要に応じ全角)
  • 日本国内で一般的に通用している英字略語は全角にすると分かりやすくなります。(例:DVD、CD、PHSなど)
  • 数字:1桁は全角表記、2桁以上は半角表記が一般的です。
  • 数字に関しての表記基準(アラビア数字か漢字数字かの判断)
    ◆慣用語句となっているものは、基本的に漢数字を使用します。
    ◆数値、数量を表す場合はアラビア数字にします。(ただし縦字幕の場合、表示状況に合わせて変更する場合あり)。
    例:二人だけの世界 5名様ご案内 2011年7月 正月三が日のあいだ 四六時中 来年4月になったら
  • 再現不能になる可能性があるため、特定機種依存文字は絶対に使用しないようにしましょう。

ルビ(ふりがな)の使用について

  • ルビは常用漢字や使用する用字用語から外れる漢字、難読と思われる地名や個人名などへのふりがなとしてつけます。乱用せず、漢字をかな表記にする工夫も合わせて考えましょう。
  • 注目させたい文字に「・」をルビとしてふる(傍点、ルビ点と呼ばれる)ことで強調とする方法がありますが、ほかにも“ ”や「 」で囲ったり文字遣いを工夫することで、強調、あるいは注目させることもできます。
  • 各話者名の最初に出てきたところ(初出話者名)には読み仮名をルビとして入れて、読み方も把握できるようにします。
漢字かな表記
  1. 使用漢字は基本的に常用漢字とし、かな送りなどは本則とします。
  2. 常用外漢字でも、固有名詞や専門用語に関してはルビ対応でそのまま使用することもあります。
  3. 音に頼れないため、同じ漢字でも、字幕中に読み方が異なるものが混在する場合は、読みやすさを考慮して、一方をひらがな表記にするなどの工夫が必要です。
  4. 既存の歌詞や他の既存文章からの転記した内容の場合、その部分の表記は全体とは別と考えて、原文の文字遣いをそのまま使用することが多いです。
  5. 表記基準に迷ったときには、市販の用字用語集を参照するとよいでしょう。(「朝日新聞の用語の手引き」、「NHK用字用語辞典」「共同通信社記者ハンドブック」といったものが発行されています)
バリアフリー字幕の基本

内容作成の基本

①発話内容の文字化の基本

実際に話されていることを、できるかぎり文字として再現する方向とします。それに加え、作品内容に合致した記述、あるいは表記を考えます。

②言葉以外の声の表記方法

話者が泣く、笑い声を上げる、叫ぶなど、言葉以外で声や音を発した場合、それらに対応する表現は、作品内容に合致した表記も十分考える必要があります。また、表記不能の場合には説明とすることもあります。

③字幕配置で留意するべき点

セリフが複雑な文章である場合、時間軸による字幕の区切り(スポッティング・はこ割り)と1字幕内の文意での改行を併用して、より直感的に素早く読み取れるように工夫します。字幕内で1行目と2行目の文字数が不釣り合いになることより、意味を確実に理解できることを優先して改行します。そのうえで、視覚的にバランスが一番よい文字配置を目指す。

文字列や単語の組み合わせにより、読みにくい状況が発生する場合は、分かりやすさ優先し、全体統一が崩れない範囲で、空白や記号、漢字とかな表記、カタカナ表記の組み合わせを考えて、読み難さや読み取り間違いがが出ないよう心がけます。

④字幕継続記号について

字数や時間の関係で話されている文章を2つに分割して表示する場合に、次の字幕に内容が続いていることを示すために継続記号を使用します。
話し方による音節が文意と一致しないために、発言の連続が判断しにくいと予測される場合、映像の状態によって次に続く発言の話者を見失ってしまうと予測される場合にも、継続記号を使って理解をできるようにします。

⑤話者名表記

どの人物が発したものかを認識できるよう、各人物の話し始めには話者名表記をつけます。話者名表記は( )などで囲むことで本文内容と区別できるようにします。

⑥話者名表記を付ける基本規則

話者名表記は、その話者が話し始めた最初の字幕に必ず入れることを基本とします。
続く字幕との間隔が大きく開いたために、同じ人の発言の続きであると認識できない場合や、発言内容に前後の脈絡がない場合、シーンが完全に変わった場合などには、同じ話者の発言が連続していても、再度話者名表記を入れます。

⑦話者名表記の省略

話し始めの最初の字幕であっても、画面内で明らかに話している人物を判別できる場合に、話者名表記を省略できることがあります。会話のテンポが速い、アップと引きショットなどが繰り返している、会話が重なり合っている場合、食事しているなどの特殊な場合には省略しないほうがよいでしょう。

⑧話者名表記の留意点

一定法則を破った話者名表記は逆に混乱を招く傾向にあります。単に話者の口が見えないから、口元が分かるからといった判断だけで話者名表記を都度操作しないほうが分かりやすくなります。

ドラマ作品などではストーリーによって人物名が途中から判明するような場合があるため、全体の流れをよく把握したうえで、状況に合わせて話者名表記を調整することを考えてください。台本どおりに話者名表示を入れると、ネタバレしてしまうといったこともあります。

⑨発言の音質などの変化を表す場合

声質の変化(電話、無線、壁向こうから聞こえるなど)の識別が必要であれば、斜体化する、捕捉を付けた話者名表記を加える、あるいは特定の括弧記号で囲むことで区別できるようにするなどの方法を使います。

⑩特殊な発言などに対する補助記号

モノローグ、心の声、ナレーションなど、通常発言以外の言葉は話者名表記や斜体表示で判別できるようにしますが、全体的に発言や音情報と頻繁に交錯するなどで煩雑になる場合は、<>などで囲む方法も併せて考えます。その際、⑨で考えた対策と同じ記号にならないようにしましょう。

また、記号や括弧の種類が増えると、逆に何が何を表すのか把握できないため、少ない種類で効果的な方法を考えましょう。

バリアフリー字幕の音や音楽情報

効果音、状況音の表示

  1. 出演者の発する声以外の音情報に対する説明が必要な場合には説明であることが分かる方法で表示すると良いでしょう。
  2. 音情報を表示する必要があるものとして、ストーリー進行に不可欠な、画面に見えていない場所で発した音、また、登場人物などの反応の直接原因となった音があげられます。
  3. その他にも、映像に付いている音に明らかな意味づけがある場合は、字幕として表示することがある(心情表現、時間や季節、場所の表現として使われている情景音など)。
  4. 音 の聞こえた感じをそのまま文字にする表音表記(ドカン・プルルル等々)は、音を知らない人にとっては内容の理解につながらないことも多いので使用には注意が必要です。
  5. 音情報の表現はなるべく平易で簡潔明りょうなものが求められる傾向にあります。必要な場合は形容詞などで補うこともあります。(心象を表す場合であれば、激しく吹く風の音と柔らかく吹く風の音では、まったく意味が異なりますよね。)。陥りがちなのが文学的な高尚な表現を入れようとする試みですが、実際の音を知らない人、音なしで見ている人には理解できない場合も多いので、逆に作品内容を阻害してしまうことがあります。
  6. 繰り返しの音などを1字幕内で表記する必要がある場合は、改行して行頭をずらすなどの表現で、繰り返しであることを理解できるよう工夫する。
  7. 効果音なのか現実に発生している音なのかの区別が必要な場合(例:舞台演劇で会場の拍手なのか、舞台上で効果音として流れている拍手なのかなど)、判断できるように表記区別をつける。
  8. 音情報が映像で見て分かる状況と同じ内容になった場合、その音情報は不要。

音楽表記

  1. 音楽や音程がある音声が流れていることを示す場合に♪を使って表記する。
  2. すべての音楽に対してその有無や内容、受けるイメージなどを文字にして伝えることは大変難しく、無意味となるので、特に作品を支える必要要素となっているのみ字幕として表示する。また、その際も他の字幕内容を圧迫しないよう留意する。
  3. ストーリー展開上や音楽の前後のセリフ内容から、流れている音楽の種類やテンポなどの説明が必要な場合は、♪の後ろに〔〕で囲んで簡潔な説明を記述する。
  4. 使用される歌の歌詞内容を表示する場合は、全体を斜体とし、歌詞の頭に字幕ごとに♪を付ける。歌詞と♪の間は半角空白をとる。
  5. 劇中のシチュエーションやミュージカルなどで、出演者が伴奏付きできっちりと歌を披露するような場合の歌詞表記も劇中使用歌と同じ扱いとする。
  6. 完全な音楽歌詞の場合は、行頭をずらすことで(チドり)表現する。
  7. セリフの延長でメロディーを付けて口ずさむ、あるいは放歌、鼻歌の場合はセリフに♪を付けるが、この場合は劇中歌などと区別するために斜体にしない。あるいは、よりわかりやすいように♪をセリフ最後に付けるなどの工夫を行う。
  8. BGMや情景音に含まれる音楽に対しては音楽表記は省く。
  9. 場面進行が音楽だけで進むような構成でセリフを含む他の字幕が長時間存在しない場合、なぜ字幕がないのかなどの不安感を持たせないよう、音声が音楽のみで構成されていることを示すために♪マークを入れる。
その他
  1. 字幕制作を行う場合、内容を重視するためには表記のルールを作品ごとに調整する必要があります。必ず作業開始前に作品ごとに文字の使い方やルール決めを行ったほうがよいでしょう。シリーズの場合は全話統一のためのルール設定も必要です。
  2. 制作者は文字化した際には表記に対して責任をもつことが大切です。そう聞こえたから、こう訳したいからと、自分の感覚だけで文字にすると、思い込みによる表記間違いや異なる情報を与えてしまうことになりかねません。
  3. バリアフリー字幕を制作する人は、音の内容を表示することばかりに気をとられず、映像内容をよく見て把握する必要があります。映像作品を見るための字幕であって、字幕を見るための映像ではないことを忘れずに。

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